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Jul 1

K浜沼だより vol.1

現代版 晴耕雨読とbumということ

埼玉の某市に引っ越して、この7月で一年と2ヶ月になる。引っ越しといっても、もともとフリーランスで、仕事の拠点=自宅というぼくのような立場のものには、単に寝起きする場所がかわる転居というレベルではなく、自分の仕事環境や生活環境までもがごっそりと変わってしまうという意味では、移転とか移住といったほうが正確といえば正確かもしれない。


さて、その某市…ロケーション的にいえば、東京から50km圏内、電車に乗れば40分前後と、本当なら田舎というよりは郊外というべき場所だが、こちらに移り住むまでの30年間、都心のどまんなかの高層階に暮らしていたものからみると、思いのほか自然が豊かで(特にぼくの棲処があるK浜沼周辺はそうだ)、もう充分に「田舎」といっていい環境。周辺はたんぼや畑ばかりで、クルマがないと買い物にもいけず、気のきいた雑誌や観たいタイトルをおいているような書店やレンタルビデオ店などむろんない。夜ともなればあたりは真っ暗で、うっかり夜道を歩こうものなら、足を踏み外してたんぼの側溝に真っ逆さ ま…というのは少しおおげさかもしれないが、でもそれも当たらずも遠からずという生活は、確かに不便といえば不便ではじめは少しとまどったけれど、すぐに慣れてしまった。


慣れてしまえばこっちのもの…ではないが、そんな日々の不便さも、都心にいたころには出来なかった田舎暮らし自然暮らし…というより本当はせいぜい郊外暮らしといった程度のものでしかないのだろうけれど…の気持ちよさに比べれば、まったくとるに足らないもので、何より、かつてはおおいにストレスを感じていた都会の喧噪から離れ、田舎の静かな環境のなか、日々大好きなバイクやクルマと愛すべき家族(といってもひとりといっぴきしかいないのだけれど)と自分たちで育てた庭先の花々を前にしていると「あくせくしたってはじまらないよ」という達観にも似た心境に自然と辿りつくことができたのは、やはりぼくにとってよろこぶべきことなんだろうと思う。そして仕事のこともバイクに乗るということも、そうした生活のなかのひとつの実践として考えられるようになり、気がつけば、毎日ほとんどだれとも会わず口もきかないまま、仕事場の周囲の森や空といった自然が発する波長や、それに呼応した自分の身体が発するリズムのようなものに耳そばだてた、以前の街にいたときのおよそ場当たり的な暮らしぶりに比べると、多分に自立的かつ自律的な「生活者」としての暮らしに没頭している自分がいた。なんだ、こんなことならもっと早く都会を脱出しておけばよかった…と思ったりもしたが、反対に30年も都会にいてあくせくしていたからこそ、こうした境地に至れたのかもしれないとも思う。


当然のことだが、生業としてはただでさえ儲からないものが、ますます儲からなくなってしまったが、しかし実はそれこそが望むところだったりもする。と同時に、以前からずっと考えていた英語でいうところのbumとかprofessional amateurというようなものについて、口先ではなく本当に実践ということを通して近づいていく、その端緒にようやくたどりつけたような気もしている。


まさに現代版晴耕雨読…このサイトも、ぼくのそんな田舎暮らし自然暮らしのなかで感じたことや思ったことを、けっこう気ままに楽しんで綴らせてもらっている。


あ、いや…だからなんなの…といわれると困ってしまうんだけれどね。



07070102.JPG
K浜沼周辺のたんぼ。緑が目にまぶしい


■ARJ2007年5月号に寄稿したものを再録しました。

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