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Jun30

ミチハル的ライディング生活の手引き vol.1

アウトサイダーとデザートマシン


最近なぜか唐突に思うことに、以前所有していたR100GSやXR250R&400R、あるいは自分では所有することはなかったが、そのヒャクに乗っていた当時、仲間の何人かが乗っていたアフリカツインといったちょっと前のバイクたちが、無性に懐かしくまた同時に輝いて見えて、できることならまた所有してその走りの世界を堪能してみたいという衝動にかられることがある。むろん、そうはいっても実際に乗るとなれば、どれももうひと昔も前のマシンゆえにその「旧さ」は否めないだろうし、最近のバイクに乗り慣れてしまった身体には、懐かしさはあっても、きっともうかつてそれらに乗っていたときと同じようには走れないだろうとも思うのだが、それでもなおこうしたバイクたちにひかれるのは、これらのマシンたちが今なお共通して持っている、現代の、とても洗練されしかも競技車然としてしまったエンデューロレーサーたちのようなバイクには備わっていない「デザートマシン」としての資質を感じるからじゃないかと思うのだ。


今さらではあるけれど、これらのマシンの背景にあるのは、最近の先鋭化し競技性が高くなったWECやダカールラリーのような21世紀のエンデューロやラリーレイドではなく、近年のそれに比べればまだまだ冒険的な要素をそこかしこにたくさん秘めてもいた80年代のパリダカ…ティエリーのころの…やバハ1000や、あるいはISDEの前身でありISDTと呼ばれていたころのふるきよきエンデューロというよりリライアビリティトライアルといったモータースポーツの古典的イベントだろう。もちろんいずれも競技ではあったけれど、今思えば、競技そのものがどうこうというよりは、バイクとともに街を出てサハラやバハカリフォルニアといったデザートへ立ち向かうという行為にこそ、当時のエントラントたちは大きな意味を見いだしていたようにも見えるし、そのバイク自体も、試合で誰か他の選手よりも速く走るためのものというよりは、街を出てデザートへ向かうためのものという部分にこそ特別な存在価値があったようにも思うのだが、それが具体的にどういうことなのかは、たとえばかつてXR-Rに乗っていたことがあるようなひとなら、ぼくがこれ以上あれこれいわなくてもよくわかるんじゃないかとも思う。


以前にもどこかで書いたことがあるけれど、ぼくがバイク=オフロードバイクに乗りはじめたころというのは、エンデューロライダーになりたいわけでもなければラリーパイロットになりたかったわけでもなく、ただオフロードライダーになりたかった。そして、そのことは今でもまるで変わっていなかったりもするのだが、オフロードライダーとはイコールデザートライダーといいかえてもいいんじゃないかと、最近思うようになった。デザートといっても、それは何もサハラやバハといった具体的な荒野をいうだけではなく、もっとスピリチュアルな、オフロードライダー(デザートライダー)にとってのひとつの精神的な目的地=デスティネーションとしてのデザート=曠野というものがあるだろうし、もともとオフロードライダーというべき人種は、みんなどこかでそうした精神的曠野を志向し目指していた「アウトサイダー」でもあったような気もする。そして何よりその一点で、同じオフロードとはいってもインフィールドから出ることのないモトクロスやトライアル(本来のトライアルはそうではないが)のみなさんとは、よくも悪くも根本的なところでのライダーとしての思考回路やバイクに対する作法や流儀といったことが決定的に違ってもいたとも思うのだが、最近はそうしたアウトサイダー的な匂いを持つ本来の意味でオフロードライダー(デザートライダー)と呼べる乗り手が少なくなってきたようにも感じるのは、時代の趨勢として致し方ないのかもしれないけれど、その反面、昔気質で、しかも今いったようなオフロードのオフロードたる部分を何より意気に感じてもきたぼくみたいなものには、そうした最近の風潮を正直少し寂しく、また物足りなく思うこともあったりする。


もっとも、いつの時代もマシンがライダーを育てるという点では、それもまた無理からぬことなんだろう。なにしろ冒頭で挙げたマシンは今や一台も存在せず、アフリカツインはバラデロに、100GSは1200GSに、そしてXR-RはCRF-Xにとってかわられた。このマシンの変遷自体がそんなシーンのかわりようを何より雄弁に物語っているといえなくもない。でもって、このところHP2に日常的に接していてふと感じたのは、こいつこそがもしかしたら、現代の新しい「デザートマシン」なんじゃないかってことで、そう思って改めて眺めてみると、このところぼくが口にしてきたメガオフということ…それはそれでよいとして、それとは別に「なるほど、そういっても(つまり現代のデザートマシンだといっても)おかしくないなあ」といえる節が多々あることに気付き「!」とさせられもしたのだった。まあこれは例によって、いささかおおげさなぼくのこじつけかもしれないが、同じメガオフに属するKTMの950スーパーエンデューロRや、ツインのマシンではないが、さきごろ登場してきたBMWのG650X-Challengeや、あるいはKTMが来年あたりきっと市販してくるだろう目下話題の690Bajaなどにも共通項を見いだすことができるんじゃないかとも思う。もちろんだからといって、ぼくは最新のレーサー的なマシンを否定しているわけじゃないし、競技者として現代のエンデューロやラリーを目指すのも素晴らしいことだ。ただ同時に、いつも「アウトサイダー」としてデザート=曠野を志向するオフロードライダーしての気概も忘れたくないなあと思う。そしてそんなとき、HP2やスーパーエンデューロや、あるいはクロスチャレンジ、まだプロトタイプだが690Bajaのような新しいとびっきりのデザートマシン=相棒がかたわらにあれば、その先にあるだろう曠野に、まだまだどこまでも突っ込んでいけそうな気がするのは、ぼくだけだろうか。



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オフロードライダーとして大切なこととは、競技に出ることでもなく、そこでよい成績を収めることでもなく、ひたすら曠野に向かって走り続ける「アウトサイダー」としての生きざまにこそあるってことを教えてくれるのが、デイナ・ブラウンが撮って昨年日本でも話題になったバハ1000のドキュメンタリー映画「ダスト・トゥ・グローリー」だ。最近日本語版がDVD化され現在発売中。アマゾンをはじめとしたネット通販などでも入手できるから、まだご覧になられていない方は、この機会にぜひとも一度鑑賞されることをおすすめしたい。そして、同じデイナ・ブラウンの作品で、史上最高のサーフィンムービーとも称される「ステップ・イントゥ・リキッド」もあわせてご覧になると、そのことの意味がもっとよくわかるのではないかと思う。…being outsider、being offroadriderってことだ。


■BTM2007年6月号に寄稿したものを再録しました。

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